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上司と私

第2章 車という密室

ロッカーで身支度を終え駐車場へ行くと、佐倉さんはすでに車内にいた。
「伊藤、こっち!」
車のことはよく知らないけれどかっこいい車だなあ。
以前付き合っていた彼氏はペーパードライバーだったから……男の人に乗せてもらうのなんて友人以外では初じゃなかろうか。そう思うとドアにかける手が緊張してしまう。
「いや、後ろじゃなくてこっち乗れよ」
佐倉さんが助手席を示す。
そんな、となりに座るとかさらに緊張するんですけど……
「お、お邪魔します」
と、そろりと身をシートへ。
「お邪魔しますって、家じゃないんだから。まあ、なんかお前らしいけど……って、なにしてんの?」
視線の先にはシートベルトをうまくつけられないで焦っている犬。私です。
「すみません、うまくできなくて」
情けない声でいうと、横から手を伸ばしてカチッとはめてくれた。

……ふいに漂う煙草と香水の混ざった香り。

瞬間、私の胸は高鳴り、頬が熱くなるのが分かる。
意識、してしまった。佐倉さんを、男性として。

「よし、行くぞ」
その声に我に返る。お願いします、と辛うじて答えた。

勝手にどきどきしてしまった自分がすごくいやらしく思えて、でもやっぱり鼓動は高鳴って、緊張のドライブが始まった。

佐倉さんをそんな目で見たことがなかったのに。頼れるしかっこいい 上司 なのに。なのに、この瞬間、佐倉さんに、欲情した。



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