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上司と私

第3章 車内は、密室なんです

さて、だらだらと過ごした休日は終わりまた嵐がやって来る。佐倉さんとのドライブのことなど思い返す余裕もないくらい、仕事仕事の毎日。
そうしてまたやって来ました金曜日。今日は皆よりも早く上がったはずなのに、休憩室でお菓子をたべたりのんびりしていたらすっかり時間がたっていた。
重い腰をあげてビルの出口に来たところで、遭遇しました、うちの部長と。
「あれ、伊藤、早く上がっただろう。どうしたんだ」
そりゃ疑問に思いますよね普通。
「休憩室でのんびりしてたらこんな時間になっちゃいました」
「ふうん、俺を待ってたのかと思った」
「そんな、違います!ちゃんと電車で帰りますから」
すごく図々しいヤツに見えたのだろうか。
「冗談だ、せっかくだから乗ってけ。一応伊藤も女だし」
返答する間もくれずに歩き出した背中をただ追うのであった。女、という響きにどきっとする。
車内にて反論。
「一応、って言いますけどいい大人ですよ?もう28ですから」
「28ね、背も低いし化粧も薄いから若く見えるな」
じろじろと見ながら感想を述べられた。やっぱり子どもっぽいのかな……。でもそんなこと言うとファンが減りますよ。
「おっと、それは気を付けないとな。まあお前は俺の部下だから仕方がないと思え」
すました顔で語る横顔に見とれてしまった。
いつも以上に素敵に見える。いけない道を行きそうになってる。ああだめだ、しっかりしないと。
そんなことを考えながら、視線を感じて顔を向けると、佐倉さんがじっと私を見つめていた。
「大人だから、誘ってんのか?」
意味が分からずに、え?と言うと。
「無防備すぎる。上司だからって、俺も男だぞ」
あっ……
なんのことかようやく気づいた。座るときに気にしていなかったけれどスカートがまくり上がって太ももが露になっている。
「すみません!」
急いで直そうとするがあせってなかなか下がらない。タイトなスカートなのでなおさらずり上がってしまう。なんてはしたない格好……
バッグでどうにか隠そうとしてみる。
「隠れてないぞ。いや、中途半端に隠そうとしている分余計に煽ってるみたいだ」
ニヤリといじわるそうに笑う。
「見ないでください……」
恥ずかしさに耐えきれず、シートベルトを外し座りなおそうとしたとき。
「かわいいな、伊藤は」
そっと、きっと赤くなっている頬に佐倉さんの手が触れた。

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