
「君は失恋をして、綺麗になった」
第2章 「なごり雪」
「お前、ほんと邪魔。
毎日毎日来やがって…
〝唯先輩〟はそんなに暇なんですか」
大きなため息をつきながら
皮肉たっぷりに呼ぶ、私の名前。
そんなに嫌わなくても……。
凛は私を毛嫌いしてる。
理由は分からないけど…
やっぱり性格の不一致なのかな。
『……バカ』
それだけ言うと
プイッと顔を背けて
近くにある本棚へと向かう私。
凛は私が離れると
すぐ開いていたページに目を落とした。
『私、本にも負けてるのか……』
凛を見つめながらそっとつぶやく。
もう何年も一緒にいるんだから
お互いのことなんて嫌ってほど分かる。
凛から見れば私なんて…
きっと恋愛対象にも入ってないんだ。
