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「君は失恋をして、綺麗になった」

第3章 「名もなき恋の歌」



すっかり遅くなってしまった
夜の20時すぎ。

最後尾の車両に乗ると
端っこの方に1人の女性が座っていた。


その頬には光る一本の直線と
赤くなった目と鼻。



俺はイヤホンから流れる歌に
集中したフリをして
さりげなく前に立つ。

すると彼女は俺の意図に気づいてか
小さな声で
「ありがとうございます」と微笑んだ。



その表情はとても無邪気。

だけど、どこか大人の儚さがあって…


『いえ……』


俺は照れた顔を隠すので精一杯だった。


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