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「君は失恋をして、綺麗になった」

第4章 「大人のココア」




友達の住んでいるところから
5分ほどの距離にある駅に着いて
かばんから携帯を取り出す。



『スー…はぁ……』



同じサークルの友達に
ここまで緊張するなんて…
本当に、私ってどうかしてる。










『……よしっ‼︎』



「何が〝よしっ‼︎〟なワケ⁇
いい歳して恥ずかしいヤツだな」



『えっ、なっ……っ⁉︎』



声のする方を振り向くと
陽呂が駅の柱に寄りかかって
こっちを見ていた。

その手には
まだ温かそうなココアと携帯。

秋とはいえ冷えたこの夜
彼はずっとここで
待っていてくれてたようだった。




「お前、来るの遅すぎ。
女がこんな時間までバイトとか
危ねーだろ」


『そ、それはそうなんだけど…
夜の方が時給いいからさ』



陽呂の優しさに
思いの外動揺する自分がいた。


身長も、服装も…
かけてくれる言葉でさえも
あの頃とは全然違う。

別人のような幼馴染がそこにいた。




「……ったく、ほらよ。
バイトお疲れってことでご褒美」



『やった!
ありがとう、陽呂!』






やっぱりあのココアは私用か。




ココアが1番好きだってこと
今でも覚えていてくれたんだね。






そう思うと嬉しくて
ちょっぴり口元がニヤけた。




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