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「再会」と呼べる「出会い」

第10章 文明の利器

「ミカ」

「何?」

教室に戻って早々、
リョウ君が話しかけて来た。

今顔を見られたら
また心配かけそうな気がして
私は教科書を出しつつ
リョウ君と目を合わせないようにした。


「次朗くんの連絡先、聞いた?」



「聞いてないよ」

「そっち行かなかったか?」

「なんで?来ないよ」

行くって言ってたの?
やめてよ、
また変な期待しちゃう…。





「なになに?どういうこと?
 アタシには教えてくれないのに
 ミカには教えてくれるの?」



エミが鋭く突っ込んだ。

「アンタ、また抜け駆け?」

「ち 違うよっ!
 昨日から料理部に入部したから
 …だからってことでしょ?

 連絡網作らないといけないし
 後からちゃんと聞かなきゃ…」

「そうなのよねぇっ!
 次朗くん、料理部に入ったのよね。
 …アタシなんで
 昨日行けなかったんだろ
 今日はちゃんと行くからっ!」

エミの表情はコロコロとよく変わる。
取り敢えず笑顔になってくれて
私は安堵した…。

だって

エミを敵にはまわしたくないもの。




「おはよーさん、
 始まるぞ、席につけよーっ!」

チャイムとほぼ同時に
久保先生が入ってきた。

「? 佐伯、大丈夫か?
 なんか顔色悪いぞ」



「大丈夫です」

「そうか? ま、無理するなよ」

リョウ君に、気付かれないように
気をつけていたつもりだけど
これじゃ、意味がない。

「あの… やっぱり気分が悪いので
 保険室に行ってきます」

「おぅ 一人で大丈夫か?」

「俺が連れて行きます」

ギョ

リョウ君が名乗りを上げた。

「一人で大丈夫だよ
 …すみません」

教室の入り口を閉めると
リョウ君を冷やかす声が聞こえてきた。
そんな事に動じるリョウ君じゃないけど

結局 心配させてしまった。











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