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「で？俺は井崎優司の事を
　聞いているんだが？」

「…は　佐伯の妊娠の方が
　一大事っしょ？」

「い　隠土先生…本当ですか？」　

「教頭先生、本当です。
　…今二日目らしくて、
　部活中、腹が痛いって言ってたし
　ポーチを落としたんで拾ったら
　慌てて受け取ったし…
　中身は多分アレですよ。」

佐伯には悪いが、全部デタラメだ。

教頭先生には何とかして
妊娠していない事を信じて貰いたい。

校長先生
もう少しいて欲しかった…


「あー…
　そうでしたか
　なら　　はぁ…良かった」

教頭先生がほっとしたように
椅子に崩れた。
俺も納得して貰えて良かった。



「なーんだ…」


木瀬が残念そうに、遠くを見る。



「井崎は…
　優秀な生徒でした。
　サッカー部ではエースだったが
　成績も良く、明るい性格で
　…在学中は特に
　問題を起こした事は無かった」

木瀬　ではなく教頭先生が答えた。

「もっとも
　我々が気付けなかった
　と言う方が今では正しいが…」


「教頭先生、目ぇ瞑ってたって方が
　正しいんじゃねぇの？
　だって優司先輩は…」

「そんな事は　ない！
　我々は見抜けなかったんだ」

「そうか？
　優司先輩が井崎建設の
　社長の息子だったからじゃねぇの？
　権力には逆らえねぇってやつ。
　献金とか、貰ってたりして…」

ニヤニヤ、
木瀬が好き勝手言うのは
我慢の限界になってきた。

あぁクソ　



「うちの学校は公立だから
　そういうのはあり得ねーんだよ。」


怒りを飲み込むってのは簡単じゃない。