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「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

「入院
 本当だったんだね」

「あ?
 ぁあ ミカから聞いてたのか
 アイツには言うなよ
 嘘ってままでいい」

「…なんで」

「心配させたくないっつーか
 もうあんま関わんないようにしてやりたいし
 アイツが今幸せでいるなら
 余計なことはしたくない」

「…」

「お前もその方がいいだろ」

おれは米にがっついた。
あったかい。
腹の奥まであったまるようだ。

「ゆーちゃんさ
 本気だったよね」

「…」

そうだよ
俺はミカのことが本気で好きだった。
可愛くて、他人の事を思いやれて、
他人のために自分を犠牲にできて…

だからこそ

俺は関わっちゃいけなかったんだよな。

そう思ってしまう。

「いーよ もう」

「…」

次朗が静かに料理を口に運ぶ。
何かを思うように、瞳を伏せて。

「新しい出会いをさがすよ
 ま 俺もてるし」

重くなった空気をかき消したくて
俺は精一杯の笑顔を作った。

「次はもっと大人な女がいいな
 エミの事も吹っ切れるくらいの」

気の多い話だが、
俺はエミの事も気になっていた。
イギリスにわたり、
早くも彼氏ができたというハガキが来たと
ミカに聞いた。
俺にそれを言うか?
…言うか。

正直、
それ聞いたとき、俺は少し安心できた。

エミにもつらい思いをさせてしまって
申し訳ないと思ってた。
俺への思いを
踏みにじるようなことしてたからな。
ごめんな
ほんと
身勝手すぎるのは十分わかってるよ

ミカもそうだけど
俺のせいでつらい思いした分、
幸せになって欲しいと思ってる

「ゆーちゃん」

「ん?」

「ごめんね」

「は
 なんだよ」

「…」

次朗はその後無言で料理を平らげた。

「ごちそうさまでした」

俺たちは別々に会計を払った。
同い年くらいの奴と食事をして
おごらなかったのは初めてだ。

「また来たいな」

「おう また来い」

新しい飲食店が近隣に次々と出店し、
客足は以前のようではない。
味はいいのだから、
少しでも客が増えればいいと思う。

「さて
 行こうか」

「ん?どこに」

「ゆーちゃんのお母さんのところ」

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