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とあるホストの裏事情・完

第24章 さわらないで

「俺は確かに傷ついてる。研斗が酷いことされて、泣いてて。俺が悲しまない訳ないじゃん?」

全部自分のせいだと、自分が悪いんだと思うのは。
きっと、あのクソ男が原因だ。

「ほら、ごめんなさい・・・っ、おれがっ、将悟を・・・」
「でも、俺が悲しんでるのは研斗のせいじゃない。 だから謝らないで。悪いのは研斗じゃない」


小さい頃から、虐待を受けていた研斗。よく生きてこれたと思ってる。
よく、俺と出会ってくれたと思ってる。

『おとうさんが怒ってるのは、ぼくが悪い子だから』
『おかあさんが泣いてるのも、ぼくが悪い子だから』


小さい頃から、この意識が植え付けられてるんだろ。
謝ってもどうにもならないって思うけど、謝るクセがついたんだろ。
だから、全部、自分が悪いと思ってるんだろ。
だから、俺が悲しんでるのも、自分のせいだって思ってるんだろ・・・。


「・・・研斗、辛かったでしょ?」
「・・・ん、うんっ」
「痛かったでしょ? いっぱい、いっぱい泣いたでしょ?」
「うん、うん・・・っ」
「それでもまだ、自分が悪いって思える?」

研斗は、俺の目をまっすぐと見た。赤くなった目で、俺を見て。
そして小さく、首を横に振った。
・・・・・・、


「俺、研斗がこうやって、自己嫌悪して泣いてるの見てるのが辛い。だって、研斗悪くないのに」
「しょうご・・・」
「自分のために泣いてよ。辛かったから、痛かったから、泣くんだよ」
「う、んっ・・・」
「自分を責めて、泣いちゃダメだ」

ベッドに上がり、研斗をあぐらをかいている膝に乗せる。
そして背中に手を回して、優しく撫でた。

「研斗、泣いて。痛かった、辛かった、って、泣いていーんだよ」
「・・・う~っ・・・・・・」
「・・・今は、自分のことだけ考えるとき」

謝るのは、心の底から謝るべきなのは、他の誰でもなく、自分だってこと。
俺は心の中で、何度も研斗に謝った。
言葉に出すと、涙が出てきそうで。言葉に出すのが怖くて。
何度も何度も、あのクソ男を殺して
何度も何度も、愛しい研斗に、謝る。

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