とあるホストの裏事情・完
第26章 トラウマ
「お疲れ」
「あっ、将悟…」
後ろから聞こえてくるのは、俺の大好きな声。
大好きな、人。
振り返ると、嬉しそうな笑顔を浮かべる将悟。
あー…かっこいいなぁ…
なんて少しの間見惚れていると、いつの間にか俺は、
「…っちょ!」
将悟の腕の中。
焦って腕を突っぱねるけど、効果は無いのと同じ。
だって俺きっと、本気で逃げようとしてねーから…
「仕事、どうだった?」
「っ、まあまあ、だったな…」
「今、俺怖い?」
「…ううん、全然。あったけー…」
「ふはっ、そっか… よかった」
規則正しく脈打っている、将悟の心臓の音。
ひと度それが離れたかと思うと、唇が重なった。
それも、一瞬のことで。
こんなにも近い距離で顔を見つめられると、ちょっと…っていうか、かなり恥ずかしい。
なんか、息、あがってきたんですけど…
「なに、熱いん?」
「そーじゃねーよっ、…」
「ふーん…」
そう軽く言うと、また唇を押し付けてくる。
今度は、顔の角度を変えながら、ゆっくりと。
将悟、女とするときみたいに俺とキスする…
優しく、甘く。
「っは…、おれっ、男だぞ…」
「………なにそれ、今さらかよ。俺、研斗のこと男にしか見えねーけど」
「うん…っ、…んっ」
壁に身体を押し付けられて、脚の間に将悟の脚が入ってくる。
要するに、がっちりホールドされてる状態。
「首弱いねー… 感じてんの?」
「しょうご…っ、…ここはだめ、だろ…」
「そーだな、続きは帰ってからってことで」
「っおう…」
少し物足りないけど、家までの我慢…
ってか俺、どんだけ将悟にハマってんだって話な…ほんと…
自分で思って恥ずかしくなって、顔を両手で覆った。