とあるホストの裏事情・完
第34章 新婚(!?)旅行
ガララ、と扉を開けると
びゅうっ、と風が入ってくる。
「うー、さっみ」
「早く入ろ…」
「やべぇ鳥肌たってきた」
やっぱり客はいなくて
静かな空間に俺の声が響く。
研斗は恐る恐る足をつけようとしてる。
「そこまで熱くねーよ」
「いや、家のがぬるいからあちーよ…」
何気なく口にした言葉だと思うけど
研斗が『家』って言った。
俺のマンションの一室のことを、
『家』って。
それだけで嬉しくなって
思わず口角が上がる。
俺の家は、研斗の家。
改めて、めっちゃ嬉しい。
下半身までつかると
上半身は寒いから変な感じがする。
「研斗、肩までつかってみ」
「これだめだ、熱すぎる」
「だーいじょーぶだって。はい俺もう慣れた~」
「えー……」
思いっきりザブッ、とつかると
じわ~っと熱いのがあったかいに変わって
まさに極楽。
未だにぷるぷるしながら足をつけている研斗は
頑張ってつかろうとしてる。
意地悪かな、とも思ったけど
ぐいっ、と腕を引っ張ってみる。
「うわっ、ちょ…むり…っ!!!あっちーって!!!」
「じゅーう、きゅーう、はーち、なーな…」
「あ゙~゙~゙……慣れた…」
「だろ?気持ちくね?」
「あ~………い~いゆ~だ~な?」
「アハハ?」
いきなり何を言い出すのかと思ったら
まさかのあの曲だった。
結構気に入ってるみたいで
それなりにテンションも戻ってきたし
安心する。
やっぱ、笑ってんのいいな………