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第29章 ♥隠れて甘いkissをして/立花と香

「隼人、アンジー、それに翔太くんまで……」



俺がのっそりと顔を上げると同時に


カウンターの中でグラスを拭いていたシゲさんが、大きな溜息を漏らす。



「失敗だなんて、そんな言い方したらいかんよ。
だいたいアンジー、君が彰くん達を巻き込むから……」

「あら!シゲちゃん失礼ね!
これは全てあなたの息子の為なのヨ!?」



ハイブランドのブラックスーツをピタッと着こなしたアンジー。


2本目の煙草を咥えると、まるでホストのように翔太がライターを差し出した。



「だって仕方ないじゃな~い。
スポンサーの依頼が、“ イケメン ” との会食だったんだもの」

「そうはいってもなぁ。
彰くんと翔太くんは一般人だろう」

「だからよシゲちゃん!
金がかからない上に、顔も体も芸能人並みのイイ男!
使わない手は無いっつーの!!」

「…………」



シゲさんが黙ってしまうくらい、アンジーはギラギラした敏腕マネージャーの顔になっている。


翔太が尊敬の眼差しでアンジーを見つめるその隣りで、隼人がニヤッと笑った。



「悪いな、主任。
お前だって、由宇の旦那の主演映画がショボかったら悲しいだろ?」

「…………」

「ヒット祈願だと思ってくれ。
ちゃんと終電までには帰れるから、心配しなくていいよ」

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