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LAST SMILE

第5章 リストバンド







★亜貴side


それは突然だった。


俺が、
ブレス関連で藤堂にアドバイスをしようとしていたとき。


こいつら、ほんとにしょうもねぇのな。


俺らが真剣な話をしようとしてんのに・・・。


そう呆れていたときだった。


モッチーが、藤堂の左手首についていた
リストバンドを素早く取り外した。




「すきあり!!」




あーあ。


また始まった。
あいつの藤堂いじりが・・・。


そろそろ注意してやるかな?


そう思ったときだった。



それは一瞬で、
俺は何が起きたか理解できなかった。





「いやああっ!!!!」





藤堂が突然悲鳴をあげた。



一瞬のうちにパニック状態を起こして、
騒ぎ始めた。




他の奴等もみんなびっくりして、
マイクにスイッチが入っていたからか、
キーンという音が鳴り響く。



俺はマイクのスイッチを消して、
藤堂を落ち着かせようと、藤堂の方を向き直った。



そのとき。




泣き喚き、耳を塞ぐ藤堂の手首に、
何かを見つけた。







「麗華!!」



そして俺は叫んだんだ。


藤堂を抱きしめるように覆いかぶさり、
モッチーたちには気付かれないように、


俺がいつも練習中に使っている
リストバンドを代わりにつけて隠した。




抱きしめると、藤堂は一瞬泣き止んで、
ふっと意識を飛ばした。








知らなかったんだ。



だけど、知ってしまった。



何も言わなくても分る。



隠したってきっと、気付かないわけはない。



藤堂が何かを背負ってきたっていうことは、
その左手首の傷跡が物語っていたから・・・。






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