LAST SMILE
第5章 リストバンド
*
誰かが呼んでる・・・。
あたしを呼んでる。
誰?どこにいるの?
“麗華”
その声は・・・。
“麗華”
お兄ちゃん??
『お兄ちゃんっ!!!』
意識が戻って、ぱっと目を開けた。
一瞬、視界がぼやけたけど。すぐに戻った。
「藤堂!?」
「「大丈夫!?」」
亜貴・・・。
それに、磯部くんと武田くんも・・・。
あたし・・・。
どうしたんだっけ??
確か・・・。
一緒に練習してて、それで・・・。
「無理すんな。な?」
お兄ちゃん・・・?
違う。
亜貴だ・・・。
「藤堂?」
お兄ちゃん?
ううん。亜貴だよ。
「亜貴・・・」
「ん?」
「麗華って・・・呼んで」
「え?」
お兄ちゃん・・・。
もう一度、一度だけでいいから、
「お願い・・・。お願い・・・」
その優しい声で、“麗華”って、呼んで??
「・・・麗華?」
「・・・っ・・・っ!!」
涙が出た。
唇を噛み締めると、自然と涙が出た。
必死で押し殺した。
ここまで出てきた言葉を、必死で飲み込んだ。
だって、言っちゃいけなかったから。
亜貴に、“お兄ちゃん”だなんて、
絶対に、言っちゃいけなかったから・・・。
亜貴は泣いたあたしを抱きしめてくれた。
不思議だ。
亜貴はお兄ちゃんに良く似てる。
あたしの、お兄ちゃんに・・・。
「・・・なさい・・・」
「え?」
「ごめん・・なさい」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
迷惑かけちゃって、ごめんなさい。
心配かけちゃって、ごめんなさい。
だから、だから・・・。
いなくならないで?
お願いだから、
離れていかないで?
ずっと、そばにいて?
ねぇ、みんな・・・。
ねぇ、お兄ちゃん・・・。