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Bloody Kiss

第1章 プロローグ

これもなんともオーソドックスな展開。
目覚まし時計の指し示す時刻を見て我に返ったわたしは、いつも通りめちゃくちゃにパジャマを脱ぎ捨てると、丸襟のシャツに袖を通したーー。











「神谷莉子、ね。
あー、美味しそ♪」


窓に張り付いて悪戯な笑みを浮かべる少年の存在など、気付きもせずに。









「ねー莉子!
今度の土曜日暇?」

夢のなかであんなに走ったというのに、現実世界でも自転車を盛り漕ぎするハメになったわたしは、半ば半泣きになりながらそれでも予鈴の鳴るコンマ一秒前にスライディングで滑り込み、ギリギリでセーフを勝ち取った。

しかし、今日は1限から体育で持久走があるためクラスメイトはほとんど事前に体操着に着替えていて、わたしはまた朝礼が終わるとともに更衣室へと全速力で向かうことになったのだった。もちろん、手を抜くことが大嫌いなわたしは持久走も全速力で走っちゃう。
おかげ様でわたしの体力は午前10時の時点で底をつき、それ以降のわたしは膨らませてから2日経った風船、焼きあがってすぐにオーブンを開けてしまったシュー、いや、押し入れに入れっぱなしのワイシャツかのような有様だった。つまり、くたくた。


「暇だけど‥なんで?」

そして下校時刻。
高校2年になって早2ヶ月が経つが、社交的とは言えないわたしにとってクラス替えというのは脅威でしかなく、心置きなく話せる友人は片手で数えるほどしかいない。
その中でも今この道中を共にしている友人、八重野優香はわたしにとって最も心を開いている、高校生活を成り立たせるうえでは欠かせない人物だ。

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