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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 表情から私が言いたいことを読み取ったのだろうか。

 定かではないけれど、零一は逃げる気はないようだ。

 蓋を開けた弁当からほのかに湯気が上がり、美味しそうな匂いが鼻先をくすぐる。

 零一は既に食べ始めていた。

 私はきっかけが掴めずなかなか座れずにいたけれど、つまらない意地を張っても仕方がないと思い、腰を下ろす。

「……いただきます」

「おにぎりも買ったけど、食うか?」

「そんなに入らない」

 合わせた手を離し、三つのおにぎりと弁当を見比べて答えるけれど、思った以上に素っ気ない口調になってしまい、小さくなる。

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