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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 零一が触れた指先が私の唇をなぞり、やがて離れる。

 それを目で追うと、零一は迷うことなくその指を自分の唇に寄せて、口付ける。

 え……。

 なん…――。

 何気ない動作。

 勘違いしてしまいそうな、行為。

 向き直り、真っ直ぐに私を見つめる眼差しが何だか痛くて、直視できない。

「雅緋」

 呼ばれて、躯が跳ねた。

 しばらく振り向くことはできなかったけど、恐る恐る目を向けると、零一が呆れたような顔で私を見ていた。

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