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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

 零一は私の手を取ると、手の平に視線を落とし、ゆっくりと唇を寄せ、触れた後、自分の頬に持っていく。

「この手だ」

 零一は、まるで大事なものを見つけたような口調で言って瞳を閉じた。

 あまりにも大切そうに扱うから、振り払うことができなくて、私の右手は零一の頬に触れたままだ。

 一見すると、私が零一に触れたがっているような状態で、落ち着いたはずの鼓動が、また、暴れだした。

 視線が絡む。

 零一の瞳は吸い込まれてしまいそうなほどに澄んでいて、全てを見透かしてしまいそうな力を持っているみたいだった。

 私が逃げるように逸らすのは、もはや必然で、それをゆっくりと追いかけてくるのが零一だ。

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