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君の瞳に映るもの

第3章 戸惑い

「あんなに乱れた姿、俺に見せたのに?」

「すっ、好きでそうなった訳じゃ……!」

 私をからかうように言って、零一は声を殺して笑っていた。

 押されている。

 主導権は完全に零一の手中にあって、それを奪い返したいのに術が見つからず、私の中で言葉にならない感情が渦巻いて喉元に燻った。

 悔しくて、言葉では勝てないから、零一の胸を叩こうとするけれど、それさえも止められ、八方塞がりだ。

 振り払おうとするけれど、力でそれを封じられてしまい、ぎゅっと拳を作り零一を睨む。

「この手が、俺の運命を変えたんだ」

 握り締めた指先に唇を寄せて、零一は呟く。

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