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君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 気を取り直して聞くと、男は観念したように両手を上げて呟くように答えた。

「桐生(キリュウ)、零一(レイイチ)だ」

「桐生零一?」

 聞き返すと、それで間違いがないと言うように、男は頷く。

 私は記憶を手繰り寄せて、その名前と同じ人物と関わりがあったか記憶を巡らせて見るけれど、やはり、繋がりは見つけられなかった。

「また偽名使ったら、裸のまま追い出されそうだからな。嘘はない。信じろ」

 そう言って零一は思い出したように濡れた髪を拭きながら、突っ立ったままの私に目を向ける。

 私にしたことも含め、不利な状況に変わりはないのに、零一は我が家の如く部屋でくつろぎ、リモコン片手にテレビをつけたりしている。

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