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君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 今すぐ消してよ、と言いたかったけれど、この鬱血の痕ばかりは、簡単に消えそうにない。

 唇から胸元までを辿った零一の指先の感覚が消えなくて、吐息が感じられるほど近くで見つめられ、沈黙に耐えきれず目を逸らして呟く。

「離れ、て……」

 それは、蚊の鳴くような声だったと思う。

「そうやって誘うのは、無意識だな」

 誘ったつもりは、勿論、ない。

 けれど、零一は困った顔をしながら、私の胸に頬をつけた。

 やだ、そんな風にされたら、心臓バクバクいってるのバレちゃう……!

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