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君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 速まる鼓動を聞かれたくなくて、零一の躯を引き剥がそうとするけれど、非力な腕はその躯を持ち上げることすらできず、私は身を捩った。

「焦ってるのか? 今すぐどうこうしようって訳じゃない。時間は、たっぷりあるし、な……?」

「え……」

 私がもがくのをやめると、零一は腕の力を緩め、私を見下ろしながら頬を撫でる。

 それは何気ない仕草だったのだけど、その表情も、纏う空気も、どことなく甘いものに変わっていったことに気づいて、戸惑ってしまう。

「知りたいんだろ? 昨日のこと……」

 逸れた話が元の場所に戻ってきて、私は息を呑んだ。

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