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君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 けれど、そうできなかった、いや、しなかったのは、零一のキスに心地よさを感じてしまったからなのだろう。

 初対面なのに。

 出会ったきっかけすら知らないのに。

 まるで、以前から知っていたように、触れる唇は遠慮がないようで、私を気遣っていて、目の前の問題を霞ませていく。

 絡まる舌が、溶け合う。

 そうやって、何人の女をこういう気持ちにさせてきたのだろう。

 冷静でいなければ、間違いなく勘違いしてしまうだろう。

 騙されないんだから……。

 

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