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君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 すぐにその力が緩まり、また、顔を覗き込まれたと思ったら、ゆっくりと近づいた唇が、柔らかく重なる。

「んっ……」

 そこには強引さも、奪うような勢いもなく、私が拒否したならすぐにでもやめてくれるのだろうと思ったけれど、それは、私の勘違いだったようで、零一は触れては離れ、また触れるキスを繰り返した。

 私の頬を撫で、額に唇が触れて、瞼に、頬に、唇の端に、そして、また、唇に戻ってくる。

「あ……」

 こんなキス、知らない。

 元彼と呼べるのか定かではないけれど、その時すら、こんなふうに触れられたことなんてなかった。

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