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冴えかえりつつ 恋

第3章 わだかまり

「 ひっぃく。」


遥暉が吃逆り上げた


「 ちゃんと覚えていたんだな。」


ーーまた 一緒に 泳ごうな。


受験前、最後に遥暉と泳いだ時に約束した。


「 今まで、頑張ってきたんだな・・・。」

一人で歯を食いしばって、
約束を果たすために・・・
上出の前に 戻ってきたのだ。


「 お前の気持ちわかったから・・・泣くなよ。」


小さな子どもをあやすように遥暉が落ち着くまで、ずっと背中を擦って 宥め続けた。


暫くすると遥暉が呟いた。


「 怪我のこと、ちゃんと連絡しなくて、ごめんなさい。」

上出のよく知る素直な遥暉を感じる。

「俺こそ・・・、勝手にお前から連絡して当たり前と思ってた。・・・ごめんな。」


「いいえ、先輩の負担にはなりたくないから・・・。」


「負担って、そんなわけないだろ 。」

こんなに感情を剥き出しにする遥暉を初めて見た。


「不安だったんだよな、わかったから。」


どれほど遥暉を不安にさせたのか、自分のプライドで後輩を慮ることができなかった不甲斐なさを思い知らされた。


「 我慢せずに、もっと言葉にしろよ 。そうでないと、 伝わんないぞ。」


遥暉が目を瞬いた。


「由美姉の言う通りだった。」

「由美?」


由美は遥暉の姉で、倫典の同級生だ。


「『できないことより、やらないことのほうが嫌われるよ。話せばわかる人だから、力になってくれる。』って、電車通学を進めてくれたのも由美姉です。」


「・・・・・。甲斐被りすぎ・・・だろう。
それとも逐一言葉にしないと気が利かない朴念仁だって意味かな、ハハッ。
どちらにしてもプレッシャー掛けるなよ。」


上出は照れ隠しに遥暉の髪をクシャクシャと弄った。



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