テキストサイズ

冴えかえりつつ 恋

第3章 わだかまり

「 ひどい顔だな。
治まるまで、もう少しここで時間潰していけよ。」


上出は遥暉の頭をもう一度クシャっとして、顔を覗き込んだ。


「 でも、先輩は明日学校でしょう。邪魔じゃないですか?」


聞き返す遥暉の顔を見て上出は少し考えた様子で 答えた。


「 実は明日科学のレポート提出。

でも、お前をそんな顔で帰したら、由美に殴り込みかけられかねない からなぁ。

アイツ可愛い顔して空手有段者だったよな。

構ってやれなくて悪いけど、ゆっくりしていけよ。」


上出は そう言うと立ち上がり、勉強机に戻った。



遥暉は小さく笑って 、そのままベッドに転がった。

「 ま、いいや。お言葉に甘えて少しお布団貸してください。」


「 えっ。」



上出が振り返ると、すでに遥暉はベッドに横たわり枕に顔をうずめて目を瞑っていた。


「 夕べ、久しぶりに先輩に会えると思ったら緊張で眠れなかったので……。」

遥輝の言葉に、自分と同じように相手への子どもじみた不信を抱いていたことを知ると、心の何処かで安堵し、以前のような遥暉の憧れでいようと気持ちが昂ぶる。


「 緊張……?
じゃあ、免疫つけるために 春休み中に何処か出かけるか?
通学路の確認とか参考書を買いに 行くとか……、プールはどうだ?」

上出は何かを埋めるように、遥暉との時間を作ろうと提案したが、

「 は…ぃ……。」

よほど眠いのか 目を開けない遥暉。


上出は苦笑し遥暉の華奢な体に布団をかけてやり
「おやすみ。」
と、いって勉強机に向かった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ