冴えかえりつつ 恋
第4章 県美で
姿勢のよい遥暉がスラリと立ち、軽く腕組みして鼻の前で左手の人差し指を立ててヒラヒラ動かし始めた。
考え事を始めたときの遥暉の癖だ。
長考に入られる前に声を掛ける。
「 遥暉。」
「あっ、先輩!」
「おまえの好きそうな絵だな。」
「 わかりますか?」
「まあ…な。」
--あんなにわかりやすくフォールされればね。
「あ、これ今回の展示の作品特選集です。先輩に…。」
「はあぁ?俺は芸術鑑賞なんて美術の資料集でも見てりゃ充分だって。」
「でも忙しいのに付き合ってもらって…。」
「猫に小判。無駄遣いするな。」
受け取った瞬間、挟んであったハガキがバサバサとおちた。
「もう、先輩ってば…。」
遥暉が屈みかけたのを制止して、踏まれないよう急いで拾い集める上出。
すると離れたところに飛ばされた一枚を誰かが拾い渡してくれた。
「ありがとうござ……」
遥暉が一歩踏み出すが、すぐ上出が前に立った。
「ありがとうございます」
上出が最後のハガキを受け取り、遥暉に渡す。
「その絵、いいよね。僕も買って帰えろうかな」
自分も気に入った一枚を『いい』といった相手が藤蔭高校の制服と見て、上出の陰から覗いた遥暉が小さな声をあげた。
考え事を始めたときの遥暉の癖だ。
長考に入られる前に声を掛ける。
「 遥暉。」
「あっ、先輩!」
「おまえの好きそうな絵だな。」
「 わかりますか?」
「まあ…な。」
--あんなにわかりやすくフォールされればね。
「あ、これ今回の展示の作品特選集です。先輩に…。」
「はあぁ?俺は芸術鑑賞なんて美術の資料集でも見てりゃ充分だって。」
「でも忙しいのに付き合ってもらって…。」
「猫に小判。無駄遣いするな。」
受け取った瞬間、挟んであったハガキがバサバサとおちた。
「もう、先輩ってば…。」
遥暉が屈みかけたのを制止して、踏まれないよう急いで拾い集める上出。
すると離れたところに飛ばされた一枚を誰かが拾い渡してくれた。
「ありがとうござ……」
遥暉が一歩踏み出すが、すぐ上出が前に立った。
「ありがとうございます」
上出が最後のハガキを受け取り、遥暉に渡す。
「その絵、いいよね。僕も買って帰えろうかな」
自分も気に入った一枚を『いい』といった相手が藤蔭高校の制服と見て、上出の陰から覗いた遥暉が小さな声をあげた。