冴えかえりつつ 恋
第4章 県美で
「 あっ…。」
「 どうした?」
遥暉が上出の陰から戸惑いがちに声を掛ける。
「 あの、岡田さんですよね。岡田アリサちゃんのお兄さんの…。」
「 ⁈ そうだけど…?」
岡田と呼ばれた藤蔭の学生が驚き遥暉の顔をみた。
遥暉が微笑むと途端に顔を赤らめうつ向いた。
「 一昨年の ピアノ発表会の時もおせわになりました。」
「ピアノ・・・・・・?あ・・・、あの、ごめん」
わからないというように首を傾げる。
遥暉は上出の陰からでてきて、岡田の前にたち、頭をさげた。
「不躾に声を掛けてすみません。僕は丸山遥暉と言います。」
岡田がまたキョトンとした。
「 ボ…ク……って、男の子…だったん…だ。」
遥暉は小さく瞬きをしてパブリックな微笑みを浮かべ答える。
「 あぁ、時々間違われます……。」
岡田は言葉を詰まらせた。
「 ごめん。てっきり--。」
ーーーてっきりデートかと思った。
チラリとハガキを拾い集めていた長身の月陵校生を見上げると、鋭い眼つきで自分を見ていて、慌てて遥暉に視線を戻した。