冴えかえりつつ 恋
第4章 県美で
ーー本当に綺麗な子だな。
泰弘は美しいモノが大好きだ。
上手く言葉で表現するのはまだまだだったが、審美眼にもチョットと自信がある。
泰弘が遥暉に見惚れていると、上出が遥暉に耳打ちした。
「岡田…、岡田慶矩の親戚?」
口調と表情が険しい。
「お兄さんです。」
「えっ⁈ 」
険しい上出の表情がさらに複雑になった。
泰弘は苦笑した。
いつものこと。
長身で甘いマスクの王子様的ルックスで、スポーツも得意でハッキリとした性格の弟慶矩は近隣高校でもちょっとした有名人だ。
それに比べ、チビで童顔女顔で勉強しか取柄がなく、趣味は読書に芸術鑑賞と地味な自分を、兄弟と思えという方が難しいのかもしれない。
とりあえず、相手ばかりが自分を知っているのは居心地が悪い気がした。
しかも月陵高校の制服の彼はやたら警戒している様子なのも気になり、泰弘からもたずねてみる。
「えっと、僕は岡田泰弘。君は…?」
「上出倫典です。慶矩君の小学校の同級生です。」
「小学校…?」
「はい、地元小学校が一緒で、岡田さんご兄弟は私立中学で地元では有名人ですから…。自分等は公立なんで分かんなくて当然ですよね。」
上出の言葉に皮肉を感じつつ、相槌をうつ。
「そ、そう…なんだ。丸山君も慶矩の同級生?」
「いいえ、1級下です。僕は4月から藤蔭学園高等部1年生です。」
「え?じゃ、4月から後輩?」
「はい、よろしくお願いします。岡田先輩。」
「先輩…なんて。」
遥暉はニコニコと泰弘をみつめた。