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冴えかえりつつ 恋

第5章 春休み

遥暉の言うとおり上出はマイペースな性格のようだ。

「岡田さん、遠慮せずどうぞ。」

上出に再度進められ、今度は素直に受けることにした。

「ありがとう。じゃ、おかかとお茶をいただきます。」

「僕、高菜。」

上出は遥暉におにぎりを渡しながら、世話を焼く。

「遥暉はしっかり食べないと大きくなれないぞ。
ほい、飲み物。」

「――わかってますけど、
高菜ご飯に――― 敢えて牛乳は組み合わせたくないです。」

「敢えてというより、強・い・て、牛乳だ!」

クールに見えた上出だが、甲斐甲斐しく世話をやき、遥暉も静かに微笑んでいるのが、チグハグして可笑しい。

「ふっ、あははは。」

「どうかしましたか?」

「丸山君と上出君は夫婦漫才を見ているみたいだね。」

笑いながら「いただきます」と包装フィルムをはずして食べ始めた。

上出もさっさと食べ始めたが、遥暉はおにぎりを眺めたまま固まっている。

「・・・・・・。」
「遥暉も早く食べろ、ワンコに襲われるぞ。」

上出に促されフィルムを外そうとするが、のりがうまく取り出せないでゴソゴソしている。

「丸山君、おにぎりの剥き方が間違っているよ。」

 泰弘が指摘すると、遥暉はキョトンと聞き返した。

「え?剥き方・・・?」

「お前、はじめてか・・・。」

上出は遥暉の手からおにぎりを取り上げ、フィルムのはずし方を教え始めた。

「ここの山の上の印をぐるりと引っ張って・・・、それから三角形の下2角を順番に横に引い抜いて外すと、ほら綺麗にのりが捲けるようになっているんだ。」

「ほおぉ--っ、すごぉい。」

綺麗に向けたおにぎりを視線の高さまで掲げ、目を輝かせて眺める遥暉。

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