テキストサイズ

冴えかえりつつ 恋

第8章 トラウマ

慶矩は上出が苦手だった。


小学校の頃から散々比べられ、ヒール役にされていたせいかもしれない。

上出は、子どものころから文武両道、みんなから信頼されるイイ奴。

対する慶矩は俺様で傲顔不遜なお子様だったせいだ。


しかしあれこれ差引いても、上出は慶矩に対して、いつも無愛想であたりがきつかったように記憶している。



今は県下一の進学校県立月陵高校の制服を着ている。


--相変わらずデキるってことか。



身長191センチの慶矩とさほど変わらない長身と、逆三角形の均整のとれたスタイルでクールだ。



--王子様と呼ばれる自分ほどではないが、「イケメンだな。」


と慶矩は値踏みした。



上出と可愛い後輩はいつも一緒に登校していることは、この数日で分かった。


上出は電車で席に着くと直ぐ居眠りの体制をとる。

すると彼も手持無沙汰なのか、所在なさ気に、目を閉じてうつむく。

結局、気になって総合駅で降りた後もこっそり二人の後をつけてしまった慶矩。



かわいい遥暉が話しかけても、能面顔のまま気だるそうに相槌を打つだけ。

そのくせ地下鉄の階段を下りながら、影のように張り付いている。




--密着し過ぎだろう?!
  

--もっと楽しそうにしろよ。


と厄介味たっぷりに心で呟く。

果ては、笑顔でないというだけで


--お前何様だ。


と悪態をつきながら、声をかけるキッカケがつかめず、ストーカーをしていた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ