冴えかえりつつ 恋
第9章 岡田家の団欒
「あら、丸山さんの三男さんのお話?」
のんびりと母親が話題に参加してきた。
「丸山遥暉さんと由美さんなら、亜里沙のピアノの発表会で何度かお会いして知っているでしょう?」
「ええ?!」
「知らない」
叫んだ兄弟は母の顔を振り返った。
「あら、覚えてない?小学生の頃はステージまで花束を渡しに行ったでしょう?」
二人は顔を見合わせた。お互い記憶にないという表情だった。
母親はリビングの本棚からアルバムを持ってきて開いた。
「この子が遥暉さん、こっちが由美さん」
驚いたことに泰弘も慶矩も、遥暉と一緒の写真に納まっている。
「でもね、遥暉君があんなことになって、ピアノ辞めてしまったのよ」
「あんなこと?」
アルバムを閉じながら母が話しを続けた。
「あら、あの事故は新聞にも載って・・・・。
市営プールの監視台が倒れ、近くにいた中学生が・・・・・・」
泰弘は耳を疑った。
遥暉の笑顔からはそんなこと微塵も感じられない。
「お母さん、それはみんな知っていることなのかな?」
「え?ええ、地元の方なら新聞にも載ったくらいだから。
松葉づえなしでは歩けないとか噂があったけれど、
さすが病院経営をしていらっしゃるから、治療が行き届いてるんでしょうね・・・」
「そう」
泰弘は、遥暉のあずかり知らぬところで彼の過去を知ってしまったことに後ろめたさを感じていた。
のんびりと母親が話題に参加してきた。
「丸山遥暉さんと由美さんなら、亜里沙のピアノの発表会で何度かお会いして知っているでしょう?」
「ええ?!」
「知らない」
叫んだ兄弟は母の顔を振り返った。
「あら、覚えてない?小学生の頃はステージまで花束を渡しに行ったでしょう?」
二人は顔を見合わせた。お互い記憶にないという表情だった。
母親はリビングの本棚からアルバムを持ってきて開いた。
「この子が遥暉さん、こっちが由美さん」
驚いたことに泰弘も慶矩も、遥暉と一緒の写真に納まっている。
「でもね、遥暉君があんなことになって、ピアノ辞めてしまったのよ」
「あんなこと?」
アルバムを閉じながら母が話しを続けた。
「あら、あの事故は新聞にも載って・・・・。
市営プールの監視台が倒れ、近くにいた中学生が・・・・・・」
泰弘は耳を疑った。
遥暉の笑顔からはそんなこと微塵も感じられない。
「お母さん、それはみんな知っていることなのかな?」
「え?ええ、地元の方なら新聞にも載ったくらいだから。
松葉づえなしでは歩けないとか噂があったけれど、
さすが病院経営をしていらっしゃるから、治療が行き届いてるんでしょうね・・・」
「そう」
泰弘は、遥暉のあずかり知らぬところで彼の過去を知ってしまったことに後ろめたさを感じていた。