冴えかえりつつ 恋
第10章 発作
上出と泰弘は帰宅方向が同じなのでなんとなく一緒に帰路についた。
黙って地下鉄が来るのを待っていると、泰弘が上出を見上げた。
「上出君はさっきみたいなこと何度か?」
チラッと泰弘を見下ろし特に返事をしなかった。
泰弘は前を向いて話を続けた。
「すごい瞬発力だね。僕は全く動けなかった。
母から事情を聴いていたのに・・・」
「・・・・」
「判断が冷静で迅速。丸山君への気配りもできて...、だからあんなに信頼されているんだな」
いつもなら遥暉の頭があるのと同じくらいのところに泰弘の頭があった。
遥暉にはいつも大勢の人が寄ってくるが、遥暉自身から親しく連絡を取り合う相手は数少ない。
目の前にいる岡田泰弘は、そんな遥暉が自分から声をかけた貴重な存在。
遥暉が信頼に足ると判断した人間だ。
だから上出は泰弘が遥暉に興味を持つことを認めることにしたのだ。
泰弘はすでに遥暉の事情を知ってるようだ。
話しても大丈夫なのだろう。
「今までは、こんなことなかったです。
ただ、新しい環境のストレスでそろそろ来るかなって思っていましたから・・・・」
「・・・・」
泰弘が上出を見上げるのがわかったが、正面を向いたまま続けた。
「正直怖かったです。
でも遥暉はもっと不安なはずだから、自分が動揺みせたらいけないと思って堪えました。
岡田さんだって俺が頼りなく思ったから、残ったんでしょう」
――あ、さっきの不満顔はそういう意味だったのか。
泰弘は、落ち着いて自信たっぷりな見た目によらないのだと、不意に『かわいい』と思ってしまった。
その言葉をかろうじて飲み込み、
「そんなことないよ、
上出君は頼りがいがあってかっこいいな。
丸山君が信頼しきっているわけだ」
上出の背中をポンとたたいてニコニコと正面に向き直った。
黙って地下鉄が来るのを待っていると、泰弘が上出を見上げた。
「上出君はさっきみたいなこと何度か?」
チラッと泰弘を見下ろし特に返事をしなかった。
泰弘は前を向いて話を続けた。
「すごい瞬発力だね。僕は全く動けなかった。
母から事情を聴いていたのに・・・」
「・・・・」
「判断が冷静で迅速。丸山君への気配りもできて...、だからあんなに信頼されているんだな」
いつもなら遥暉の頭があるのと同じくらいのところに泰弘の頭があった。
遥暉にはいつも大勢の人が寄ってくるが、遥暉自身から親しく連絡を取り合う相手は数少ない。
目の前にいる岡田泰弘は、そんな遥暉が自分から声をかけた貴重な存在。
遥暉が信頼に足ると判断した人間だ。
だから上出は泰弘が遥暉に興味を持つことを認めることにしたのだ。
泰弘はすでに遥暉の事情を知ってるようだ。
話しても大丈夫なのだろう。
「今までは、こんなことなかったです。
ただ、新しい環境のストレスでそろそろ来るかなって思っていましたから・・・・」
「・・・・」
泰弘が上出を見上げるのがわかったが、正面を向いたまま続けた。
「正直怖かったです。
でも遥暉はもっと不安なはずだから、自分が動揺みせたらいけないと思って堪えました。
岡田さんだって俺が頼りなく思ったから、残ったんでしょう」
――あ、さっきの不満顔はそういう意味だったのか。
泰弘は、落ち着いて自信たっぷりな見た目によらないのだと、不意に『かわいい』と思ってしまった。
その言葉をかろうじて飲み込み、
「そんなことないよ、
上出君は頼りがいがあってかっこいいな。
丸山君が信頼しきっているわけだ」
上出の背中をポンとたたいてニコニコと正面に向き直った。