テキストサイズ

冴えかえりつつ 恋

第10章 発作


しばらくの沈黙の後、上出は泰弘にGWに県立博物館の企画展の話を切り出した。

「そういえばGWのオランダ絵画展の話は遥暉としましたか?」

「? いいや、まだ」

「遥暉から俺の都合を聞かれたんですけど、岡田さんが遥暉の事情を理解してフォローして下さるなら、二人で行った方がいいでしょう・・・・」


相変わらず正面を向いたままの仏頂面で平静を装っている(?)上出に、ちょっと意地悪をいってみた。


「二人で・・・・、ね。心配で後からコッソリついてくるんじゃないの?」

「は?」



―――『は?』って、自覚ないのか?
  
そんなわけないだろう。

とぼけるつもりかな。



泰弘は、上出が無自覚なのか、トボケているのかを確認したくて、話を踏み込んでみた。



「そうだね、僕は二人っきりの方が都合がいいかも。

丸山君も...美術便覧で芸術鑑賞すませるような芸術音痴とじゃ、フラストレーション溜まるよね」


「・・・・・・」


とりあえず遥暉の趣味に付き合っているが、退屈しているのがモロ分かりで遥暉が恐縮していることも、上出は分かっていて反省に表情が硬くなる。



泰弘が可愛い顔で小悪魔的にニヤリとして、上出を見上げる。

「僕も丸山君...好きだな。
僕なら欲求不満を解消してあげられる」



上出の緊張が伝わる。

「それは男子校的ジョークですか」


泰弘は上出が男子校的ジョークといったことで、確信した。


ーーよし、もうひと押し。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ