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冴えかえりつつ 恋

第11章 親友以上、恋人未満

朝の滑り出しはいい雰囲気だったのに、美術展を出る頃には圭一は最悪の気分になっていた。

確かに圭一が勝手にオマケで着いてきたのだから、文句を言えた立場ではない。

しかし圭一のイライラは募るばかりだった。



 最後の展示室を出たところで泰弘は圭一をトイレに引っ張ってきた。


「その不機嫌面をなんとかしろよ。混雑は仕方ないだろうGWなんだからどこ行っても・・・」


泰弘は圭一の不機嫌が混雑のせいだというが、
混雑は毎日の通学電車で泰弘をガードしているから、押されたり足を踏まれたりしても慣れっこだ。



イライラの原因は、泰弘が

「丸山君、丸山君」

と遥暉の脇で笑顔全開だからだ。



日頃は可愛いといわれることを嫌がって
伊達メガネでその整った女顔を隠している泰弘が、

今日は眼鏡なしで
惜しげもなく笑顔を振りまいている。


――泰弘の笑顔は俺だけのものなのにッ!



泰弘の仕打ちも腹立たしいが、1つ年下なのにクールな顔して天使たちの世話を甲斐甲斐しくしている上出がの存在が、自分だけに疎外感を感じさせていた。




「圭、聞いてる?」


「仏頂面で悪かったな。俺に輪をかけたようなのがいるだろうがっ!?」




「俺のは元々なんで、悪しからず」




背後から上出が現れ、シレッと遥暉と一緒にトイレに入って行った。



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