テキストサイズ

冴えかえりつつ 恋

第12章 犬養邸で

カポーーーン。


「広い」


風呂桶を置く音が半端なく響く広さの浴室。

旅館に来たのかと錯覚してしまうほど、広い。


「丸山くんちのご家族は何をしている人なのかな?」


呆気にとられた圭一に、上出は思わず笑った。


「とりあえず風呂屋じゃないですよ。

犬養家は病院や学校経営などをしているんです。

俺のお袋も犬養の系列幼稚園で園長してますし」



泰弘が尋ねる。



「そもそも丸山家は僕らの地元でも300年続く旧家だろ?
その本家となるともっと古くて由緒あるんだろうね」



「そうですね、家系図は桓武天皇の時代まで遡れます。

明治には爵位もあって、鹿鳴館への出入りも許されてたとか...」


「華族か、世が世ならお殿様―――必然の気品ってやつか・・・」


「あ、その反応久しぶりです。小さい頃はよくいじめられたんですよね。お殿様って」


遥暉の言葉に、圭一が突っ込んだ。


「でも、丸山君は分家の三男坊だから『冷や飯食い』だな、ははは」


「う~ん、と。僕、本名は...犬養遥暉...です」


遥暉の告白に、圭一と泰弘は息をのみ、上出は視線を外した。


「?!」

「!!」

「.....」




ストーリーメニュー

TOPTOPへ