さよなら、またね。
第2章 蒼士side
思い出にふけっていると、マスターが目の前にやってきた。
「いい男が1人で、そんな色っぽい顔してるのは勿体無いねぇ?」
紳士という形容詞がぴったりなマスターは、言葉少なに俺の心を掬う。
決して質問ではない言葉は、心地よくて、3年前から俺はここの常連だ。
この、【Redémarrage】再出発という名のBARの。
前に踏み出せない俺には不似合いだが。
自嘲するように口を歪めると、小さなBARのドアベルが響いた。
マスターはドアに向かって微笑んだ。
「いらっしゃいませ」