さよなら、またね。
第3章 不似合いな感情
ー蒼士sideー
初めて見る顔だ。
整った顔立ちに、長い黒髪。柔らかなノースリーブブラウスから伸びるすらっとした華奢な腕。
タイトなパンツは女の脚の細さを強調していて、低めのピンヒールが美しい佇まいを演出していた。
はっきり言って好みのタイプだ。
男として被虐心をくすぐられるような・・・
ただ、彼女がマスターに言った一言にドキッとした。
『心が空っぽで、何を飲んだら満たされるのかわからないんです。』
俺の事かと思った。
マスターに促されるまま、カクテルを口にはこぶ彼女の横顔から目が離せなかった。