さよなら、またね。
第3章 不似合いな感情
「それは俺も同じかもな。」
「え?」
「俺は、妻が楽しそうに話すことを理解できなかった。違う世界の生き物だとすら思っていた。だから、妻が働きたいと言ったときも、どうせ無理だろうと高を括ってたんだ。
黙って家のことをしていればいい、外にでて誰かに迷惑をかける。どうせ、尻拭いをするのは俺なんだからってね。」
口元を歪めて笑う彼からは、後悔にも似た感情が零れていた。
「私たち、似たもの同士なのね。」
「いや、君は俺よりずっと大人で、ずっと強い。」
「ううん、私は彼を許してなんかいないわ。自分が惨めにならないように、自分を守っているだけ。」
「それでも、俺なんかより遥かに気高いよ。」
「・・・ありがとう。」
また、泣けてきた。
この半年で、誰にも頼れない自分がいた。
優しくされても、どうせ惨めな女だと思っていたから。
彼は、そっと私の肩を抱いて、彼の肩に寄り掛からせてくれる。
私も素直に従う。
誰かを温かいって感じるのも久しぶりな気がした・・・。
彼の膝に手をついて
彼を見上げたら
彼も私を見ていた。
私たちは、そっと唇を交わした。