さよなら、またね。
第3章 不似合いな感情
ー澪sideー
彼が話した事は、本当に彼の過去なんだろうか?
こんなに優しい人が?
それ程、今目の前の彼には似合わないもので、私はただ黙ってうなづくしかなかった。
「笑えるだろ?こんなに情けない男なんだ。」
困ったように自嘲する彼が、少し可愛かった。
「想像もできないわ。今はもう遊んでないの?」
「もう、そんな元気はないよ。」
「もったいない。モテるでしょう?」
「いや、今日転勤してきたばっかりだからわからないな。」
「あら。大変ですね」
「サラリーマンの辛いところさ。」
ふふっと笑って見つめ合うと、やっぱり優しい顔で微笑んでくれて。
「私ね、夫...元夫の仕事には一切口出ししなかったの。別の会社だから聞いても相談に乗ってあげられないし。でもそれって、夫と向き合うことを避けてたのかな?って・・・。
だって、初めて会ったあなたとはこんなに色んな話しができて、目が合えば笑い合う。
もう夫とは、いつから笑いあってないのか、覚えてもないもの・・・」