
色にでにけり 恋
第13章 いつもそばに
包みを開くと、扇子が2本。
「なんだ?」
扇子を遥暉に手渡しベッドの遥暉の横に滑り込み腕枕をする。
遥暉は1本を枕元に置き仰向けに転がると、黒い親骨の扇子を綺麗な指先でパタパタと開いた。
月光に透ける藤の花弁が夜露を含んで微かな香りさえしてきそうな・・・美しい景色。
淡彩で描かれた扇画はまるで細やかでたおやかな遥暉の姿そのままを思わせる。
「遥暉が描いたのか?」
遥暉は薄っすらと微笑みを浮かべて、恨みがましく呟いた。
「上出先輩が会ってくれなかった数日の切ない夜の手慰みに・・・。」
遥暉は扇子を最後まで開いた。
すると流麗な文字が短歌を結んでいた。
