色にでにけり 恋
第16章 エピソード 2
「いやね、先週だったか遥暉の制服のポケットから短歌のメモが出て来て、
見つけたのが母だったんだけれど、相手は誰だろうって。
えらく艶めかしい内容だったんで、気になって・・・・・・。」
俺は背中に冷たいものが走った。
--じゃ、何か。
この烏羽玉のラブレターは
皆様に読まれてるってか?
しかも書いた本人に内緒で?
俺は聡さんの視線から隠すように、烏羽玉の扇子を鞄の中に突っ込む。
「さ、さぁあ?でも短歌なら、先月古典の課題がどうとかって・・・・・・。」
「古典の課題?そういえばそんなこと言っていたかな・・・・・・。」
「ところで、聡さんはどうしてここに?」
「ああ、今から東京に戻るんだ。
新幹線の駅まで家の車で送ってもらおうと思ってね・・・。
ついでに君たちも最寄り駅で下ろしてもらえばいいかと思って、裏門に車を回すように頼んだ。
朝からこの暑さだからね。
乗っていくだろう?」
--短歌の話で十分涼しくなったよ、聡さん。
「あ、ありがとうございます。」
まあ、楽して行けに越したことはないから、ありがたく便乗させていただきます。