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色にでにけり 恋

第2章 ’にほふひと’

しばらく上出の胸にしがみついていた遥暉が呟く。


「先輩の・・・・・・匂い・・・・・・」




首筋に遥暉の吐息を感じた。


「匂いって・・・・・・汗臭いか?」


「ううん、違います。僕が癒されるアロマです」


「アロマ・・・、柔軟剤か?」



「・・・・・・運命の人は花の香りがするんだそうです」




--先輩は柑橘類の花のような甘くて爽やかな香りがする


と遥暉は感じている。



白くて小さな花は華やかさはないけれど、将来誰かの渇きを潤す黄金色の実に成長する。


白い花をたくさんつける濃緑の果樹木が目に浮かぶ。


それは上出の存在そのもののように思えた。



「どんな匂いなんだ?」



上出が自分のシャツを鼻に押し当てて臭いを嗅いでいる。


--ふふっ、先輩、可愛い


「将来、美味しい匂いです」


遥暉は上出の唇の端を舐めあげ、ギョッとする上出をみて悪戯っぽく笑った。

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