色にでにけり 恋
第3章 障壁
遠くで担任の声が聞こえる。
「じゃあ、教育実習生の先生を紹介するから」
担任が、そう言って教室のドアを開け実習生を招き入れる。
「初めまして、本日より皆さんの生物の授業を担当させていただきます。
教育実習生の、丸山聡です。
3週間よろしくお願いします」
「丸山先生はT大医学部の院生だから、皆も後輩になれるように進路の相談にも乗ってもらいなさい」
生徒が笑いながら野次を飛ばす。
「無理、無理ぃ」
「上出くらいでしょ」
上出は自分の名前に反応してようやく前を見た。
クラスメイトが自分に視線を向け、教壇の脇に立つ実習生は上出を見つけて大人の笑みを向けていた。