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色にでにけり 恋

第7章 恋文

午後9時過ぎ。

遥暉は上出から電話で家の裏門に呼び出された。


「悪いな、こんな時間に呼び出して」

「先輩は、今帰りですか?」

「ああ」


上出は制服姿で鞄も持ったまま。


「学校行事の準備は捗ってますか?」

「うん、まあまあ」


--本当の事は話してくれないけれど、今はそれでもいい。
ハッキリ拒絶されるより…


遥暉は俯き上出を見ようとしない。


入学前の再会の日、遥暉はこんな風に上出の答えを怯えた顔で待っていた。


今にも消えてしまいそうな遥暉。



上出は今朝泰弘に言われた事を思い出した。


『避けられているのじゃないかと心配して・・・』


門灯から蔭になるところへ遥暉を引っ張っていき、遥暉に口づけた。


「好きだ。海斗なんかに靡くなよ」


お互いの表情は暗くてよくわからないかったが、上出は遥暉の動揺を感じた。

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