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色にでにけり 恋

第8章 クラスメイト

ここ数日の保坂は毎日遥暉に勉強を見てもらい、
当日のノルマを終わらせると、
さっさと下校していった。


数日前までなら水泳部見学に行こうだの、
享邦学院の見学に行こうだのと
遥暉を誘って来たのだが、
最近はやけに大人しい。


あんなに水泳部の勧誘をしてきたのに、
遥暉はちょっと肩透かしを食らった気分だ。


3年生の授業もまもなく終わる。


今日も上出の言いつけ通り
泰弘と帰ることになっている。


「はぁっ。」



スマホケースに挟んだ、2枚のノートの切れ端を取り出し眺めては、ため息をついた。


『烏羽玉(ぬばたま)の
  月さす丘の 藤蔭に
   おぼろ白き 君の襟元』

『風光る 君立つ丘の 藤の下
さやけき瞳に 永遠映らむ』



失したと思った自分のメモはクローゼットのドアの陰に落ちていた。



--今はすでに初夏。


  この歌の季節はすでに過ぎてしまったけれど、

  僕たちの関係は季節がとまったまま。

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