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恋してキスして抱きしめて

第22章 青春フルスロットル

ドラム

ベース

キーボード

ギター



………そのバンドの中央で、スポットライトを浴びた1人の男。


アリーナ席と化したトラック上、俺のいる最後尾からステージまでは100メートル以上距離があり、その表情までは見えねぇけど


マイクスタンドを握る、あのツーブロックの茶髪は………



「トップバッターのボーカルを捩じ伏せて
急遽飛び込みで歌い始めたんだぜ」



携帯を切った委員長が、満足そうに笑う。



「ヒメが歌上手いって、お前知ってた?」

「…………っ」

「ったく、ほんと腹立つよな。
天は二物を与えずなんてことわざ、あいつには当てはまらない」



………会社近くのよく行くジャズBARで、ヒメは趣味の一環としてボーカルをしているから


鳥肌が立つ程、あいつの歌声に惹きつけられることは分かっている。




ただ、問題は


数時間前、俺を送りだしたはずのヒメが


なぜ、今この大学の野外ステージで歌っているかということだ。

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