
恋してキスして抱きしめて
第23章 もう一度、あの場所から
「………最初は
友人と上司に頼まれて仕方なく始めた、意味不明な恋愛教育係だった」
「…………!」
マイクが拾うユーリさんの声が、スピーカーから聞こえると
ざわざわしていた周りが、一瞬で静まりかえった。
「自分自身が気付かないふりをしていたけど……
結局、俺はあの頃の失恋をずっと引きずっていて
誰とも、恋愛をする気にはなれなくて」
「…………っ」
「正直、金と暇潰しになればいいって、その程度だったんだ」
………ユーリさん………?
体全体に、衝撃が走る。
ユーリさんの声はとても穏やかで、風のように優しくて
だけどあたしは
全身が雷に打たれたみたいに、痺れて動けない。
