
短編集。
第2章 客×花魁
僕は7の頃ここで生まれた。
僕の母はここの花魁だったんだ。
だけど、男としてこの世に産み落とされた僕。
なのに、僕は花魁にならなければならないらしぃ。
そして、僕を育ててくれるのが。
「お菊(きく)、こやつを育ててはくれんかね。」
僕の目の前にいるのは、鮮やかな着物を着て、髪の毛を結び飾りをつけた人。
その人の美しさゆえ、飾りなど本当にその美しさを引き立てる飾りにしかならない。
「お美津(みつ)さん、わっちでいいんでありんすか?」
「何言ってんだい、太夫のあんただから言ってんだよ?」
「でも、お美津さん。わっちは、太夫でも周りの花魁と変わりんせん。
それでも、わっちと言ってくれるでありんすか?」
お美津さんとお菊さんが話し合ったまつ。
僕の面倒をお菊さんが見てくれることになった。
「よろしく頼みんす...ぬし、名をなんと申す?」
あ、僕の名前。
「もしや、ないでありんすか?」
そう、僕の名前はまだ決まってない。
「そうか...なら、魅姫。お魅姫と申せ。
ぬしはきっと、凄い花魁になりんす。
わっちは、ぬしを育てるからには太夫にしなんす。
だから、ぬしもわっちについて来なんし。」
そして、僕はお魅姫になった。
