いつくしむ腕
第1章 愛しいひと
透明のガラステーブルに並んだ料理たちに、優太が最初に発した言葉は
「おおー」
だった。大したものは作っていないけど、この人はいちいち歓声をあげてくれる。
炊き込みご飯、玉ねぎとわかめのお味噌汁、葉ものと青菜と生姜の煮浸し、ミニトマト。
「果夏、冷めちゃうよ。食べないの?」
これ焼いてから、とフライパンに向かいながら答える。
肉が食べたい、というリクエストに応じて豚肉を焼いているのだ。
「俺、食べててもいいの?」
「いいよ、すぐ行くから」
了承を得て安心したらしく、テーブルに向き直って
いただきます、と手を合わせた。日に焼けた浅黒い手。
優太のこういうところが好きだ、と思う。
子供のように素直な反応、やんちゃそうな見た目にそぐわぬお行儀のよい「いただきます」。
わたしは、いただきますやごちそうさまの言えない人は嫌いなのだ。
旨い!というお褒めの言葉が聞こえた。
振り向いて駆け寄り、その表情を見る。
まんざら嘘でもなさそうで、わたしは本当に安心する。
「味、少し薄くない?」
「薄くない。旨いなあ」
口元がほころぶのを感じた。元来、単純なのだ、わたしは。
台所へ戻り、焼き上がった豚肉をお皿にのせ、優太に出した。
我ながら、いい栄養バランスだ。
こころの中で満足したわたしは優太の隣にすわり、箸を取った。
優太に出逢って、まだ3ヵ月ほどだ。
付き合って2ヵ月、お互いを、きっとまだよく知らない。
ーーもっと長く一緒にいるような気がする。
1ヶ月経った際のわたしの言葉だ。
それぐらい、この人には不思議な安心感がある。
だいたい、人見知りをするたちのわたしが 初対面であんなに打ち解けたことが珍しいのだ。
出逢ったその日(それは共通の友達同士の飲み会だった)、二次会で既にわたしは名前を呼び捨てされていた。
そしてそれを、嬉しく思った。
次の週にはもう二人で飲みに行ったし、
その次の週には優太の家に上がっていた。
その時、優太は一切わたしに手を出さなかった。
下心だけじゃなかったことが、わたしにはとても喜ばしかった。誠実なおとこのこ。
それからは、すぐだった。次の週には家で遊び(まあこの時ちょっとした事件があったが)、次の週には恋人になった。
早すぎるとは思ったけど、止められなかった。
不器用だけど、憎めない、とても愛しいひと。
心穏やかに過ごせると信じて止まなかった。
「おおー」
だった。大したものは作っていないけど、この人はいちいち歓声をあげてくれる。
炊き込みご飯、玉ねぎとわかめのお味噌汁、葉ものと青菜と生姜の煮浸し、ミニトマト。
「果夏、冷めちゃうよ。食べないの?」
これ焼いてから、とフライパンに向かいながら答える。
肉が食べたい、というリクエストに応じて豚肉を焼いているのだ。
「俺、食べててもいいの?」
「いいよ、すぐ行くから」
了承を得て安心したらしく、テーブルに向き直って
いただきます、と手を合わせた。日に焼けた浅黒い手。
優太のこういうところが好きだ、と思う。
子供のように素直な反応、やんちゃそうな見た目にそぐわぬお行儀のよい「いただきます」。
わたしは、いただきますやごちそうさまの言えない人は嫌いなのだ。
旨い!というお褒めの言葉が聞こえた。
振り向いて駆け寄り、その表情を見る。
まんざら嘘でもなさそうで、わたしは本当に安心する。
「味、少し薄くない?」
「薄くない。旨いなあ」
口元がほころぶのを感じた。元来、単純なのだ、わたしは。
台所へ戻り、焼き上がった豚肉をお皿にのせ、優太に出した。
我ながら、いい栄養バランスだ。
こころの中で満足したわたしは優太の隣にすわり、箸を取った。
優太に出逢って、まだ3ヵ月ほどだ。
付き合って2ヵ月、お互いを、きっとまだよく知らない。
ーーもっと長く一緒にいるような気がする。
1ヶ月経った際のわたしの言葉だ。
それぐらい、この人には不思議な安心感がある。
だいたい、人見知りをするたちのわたしが 初対面であんなに打ち解けたことが珍しいのだ。
出逢ったその日(それは共通の友達同士の飲み会だった)、二次会で既にわたしは名前を呼び捨てされていた。
そしてそれを、嬉しく思った。
次の週にはもう二人で飲みに行ったし、
その次の週には優太の家に上がっていた。
その時、優太は一切わたしに手を出さなかった。
下心だけじゃなかったことが、わたしにはとても喜ばしかった。誠実なおとこのこ。
それからは、すぐだった。次の週には家で遊び(まあこの時ちょっとした事件があったが)、次の週には恋人になった。
早すぎるとは思ったけど、止められなかった。
不器用だけど、憎めない、とても愛しいひと。
心穏やかに過ごせると信じて止まなかった。